世界の中の日本 [図書室]
久々に面白い本に出会った。
個人的には,★★★★☆ くらい。
著者は,日本藝術院院長。
決して浮ついた本ではなく,内容は至って真面目だが,飽きずに楽しめる。
グローバル社会で生きる日本人として,当然知っておかなければならないような,歴史,地理,経済,社会について書かれた本。Bondの指定参考図書にしてもいいのではないかとさえ思うくらい。
歴史と地理と経済とが有機的に結び付けられている。
簡単に読めるのに,これを書くには相当の幅広い知識と調査が必要だったろうな。
MBAが会社を滅ぼす [図書室]
パリスの審判 [図書室]
2冊の本を読んでみました。全く無関係に手に取ったそれぞれの本だったが,実は非常に密接な関係がありました。それが何か分かるでしょうか?
1976年,パリで行われたワインの試飲会で,カリフォルニアワインがフランスワインを初めて下した時の様子が記されている。「人がビールを作り,神がワインを作る」(マルチン・ルター)とも言われるワイン対決でフランスが負けるなど夢にも思わなかったフランス人審査員の狼狽する様子が笑える。
トロイア戦争とシュリーマン [シリーズ絵解き世界史2] (シリーズ絵解き世界史 2)
- 作者: ニック・マッカーティ
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2007/08/23
- メディア: 単行本
こちらは,カラーの絵がたっぷりの世界史。文字ばかりだと退屈しそうだが,この本は童心にかえって楽しめる。金にものを言わせ,他の年代の地層から出土する遺跡には目もくれず,ひたすらトロイヤの遺跡を探そうとするシュリーマンに,これまでの印象が随分と変わってしまった。
共通点は,「パリスの審判」である。
Judgement of Paris
と書けば,パリで行われた審判という意味になるが,もう一つ意味がある。
ギリシャ神話に登場する有名な一場面である。
「最も美しい女神」を選ぶことになったパリスは「世界一の美女を与える」と言ったアフロディテを選び,後のトロイア戦争の引き金を作ったとされている。
再び,カリフォルニアワインがフランスワインを破ったのは,1976年から30年後。
http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/drink/wnews/20061027gr02.htm?from=goo
中村天風 [図書室]
慰安婦問題 [図書室]
慰安婦問題という問い―東大ゼミで「人間と歴史と社会」を考える
- 作者: 和田 春樹
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2007/08/08
- メディア: 単行本
慰安婦問題に詳しい東大教授(大沼教授)が,様々な論客を自分のゼミに呼び,公開討論が行われた際のやり取りが収められています。
慰安婦問題の是非を問うといっても,何に対してに是非なのか,というところから議論が始まります。この本の中で登場した論点を整理してみると大体次のようになります。
1. 慰安婦の人数について
統計にはかなりばらつきがある。4.5万人から40万人説まである。南京大虐殺のように,あったのかなかったのかという論争では無く,それはあったという事実は一応認められているようだ。そもそも,何人だったのか?という論点は,どちらかというと補償額を決めるために必要,というだけで,本質的な議論には関係が無いかもしれない。
2.慰安婦の国籍について
韓国人,中国人,台湾人。特に台湾人は,日中国交回復の際に凍結されてしまったという政治的背景もあり,ややこしい。
3.連行されたかどうかについて
連行されたのなら,慰安婦ではなく,性奴隷である。従って慰安婦という呼び名には反論が起こる。ただし性奴隷という呼び名にも被害者の抵抗があるため,「慰安婦」というカッコつきで示される。プロフェッショナルの働き手もいたという点で一括りに考えられない側面があります。
4.国家としての責任について
アジア女性基金という半民半官の組織ができ,一部の被害者に償い金を払った。これは国家間の解決になったのかどうか?
5.今の常識と当時の常識の違いについて
戦争は是か非か。慰安所というシステムそのものは是か非か。当時の状況において,何が問題だったのかを,当時の常識を考慮しながら考える必要がある。
6.事実の共有だけでは解決しない可能性について
事実を共有したとしても,解釈の違いが生じる。特に倫理観に対する解釈の違いは厄介である。原爆を戦争の終結に必要だったとする米国のように,必要悪という倫理観が存在する。
7.総理の手紙について
総理大臣が送った謝罪の手紙で何が達成されたのか?何が問題だったのか?
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/hashimototegami.htm
8.被害者の本当の気持ちについて
被害者の気持ちに本当に響く解決策となっているのかどうか?
これらについて,大沼教授と,上野千鶴子,長谷川三千子,村山富市といった面面が議論を展開しています。朝まで生テレビとは違い,勝負師同士が真剣勝負という感じで,白熱した攻防が繰り広げられています。そういう意味で,二重に勉強になる本だと思いました。
地図 [図書室]
Bond-BBT MBAの卒業式に出た翌日,東京駅近郊の地図専門店に行ってみた。
狙いは,北極から見た世界地図。
北極海の氷が解けたあとの,新しい航路の利権を巡って各国が争っているらしい。
アメリカから見たときに,ロシアが隣国であるように,北極点を中心にすると世界がどのような位置関係になるのかを調べてみようと思ったからだ。
八重洲口の高島屋の近くにある,ぶよお堂にわざわざ足を運んでみた。
(本社はこちら。 http://www.maphouse.co.jp/ )
最近はネットで注文ができるので,わざわざリアルな地図屋に行くことも無いのだけれど,一個一個地図を開いて見せてもらいながら,あれでもない,これでもないというやり取りは何となく懐かしい感じがしました。
アメリカとフランス [図書室]
2冊セットで読んでみました。
なんだこりゃ!フランス人―在仏アメリカ人が見た、不思議の国フ・ラ・ン・ス
- 作者: テッド スタンガー
- 出版社/メーカー: 新宿書房
- 発売日: 2004/08
- メディア: 単行本
なんだこりゃ!アメリカ人―在仏アメリカ人が斬る、不思議の国ア・メ・リ・カ
- 作者: テッド スタンガー
- 出版社/メーカー: 新宿書房
- 発売日: 2005/07
- メディア: 単行本
フランス人の文化的特徴について興味深い記述がありました。日本人は周りと同じことをしようとする,というのと同じようなオーバージェネラリゼーションだとは思いますが,何となく分かる気がします。
・フランスにとってグローバリゼーションは,フランス流の普及である。中程度の国と同レベルという統計が示されただけで国家の威信が傷つけられたと感じる。
・知識人や政治家は,グローバリゼーションを必要としないだけでなく,敵視している。
・フランスでは商いに対する古くからの偏見がある。生活に必要な財を生み出すことは,副次的な価値しか見出されていない。
・ノーベル哲学賞があれば良いと思っている。
・自国以外の世界に反感を抱くことすらある。
・恐ろしいほど自信に満ち,常に自分は正しいとの確信を持っている。なぜなら,フランスでは,おのれの間違いを認めることは,面目丸つぶれ,恥辱をあらわすからである。間違いを自ら告白することなど問題外である。口癖は,「私のせいではない」。
・フランス人は略号狂である。CGT, CFTC, CFDT・・・ いろんなものを略号で呼ぼうとする。
久々の図書館 [図書室]
久々に図書館に行ってみました。
読んではうとうと,読んではうとうと。
読書の秋です。
- 作者: ジョセフ・E. スティグリッツ
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2006/11
- メディア: 単行本
原著で読もうかと思ったけど,ずっともっておく本でも無さそうだと思い,日本語訳版を借りてきた。著者はノーベル賞経済学者のスティグリッツ。
お薦め度 ★★☆☆☆
日本の読者に向けた序文に次のような記述がある。
日本のような民主主義国家で「格差社会」が進行した場合,やがては社会的不公平感に衝き動かされた「持たざる者」の不満を抑えようと,政治的リーダーが彼らに実現不可能な非現実的な公約をとりあえず提示するといった憂慮すべき事態を招く
まさにその通りである。
ただ,この本が言いたいことはあまり多くない。
グローバリゼーションは,アメリカの傲慢である。
特定の国や集団を利することにしかならない。
どうしたらよいか?
選択肢は3つある。
1つ目は,放置
2つ目は,・・・
書くのも面倒なくらい中身の無い結論である。
アメリカの企みを暴くための事実をいろいろ並べたて,
なんとかしなきゃ・・
というような流れ。
ただ,列挙してくれている事実については,一見の価値あり。
一応マクロ経済学者らしい話題を提供してくれる。
最近買った本 [図書室]
最近買った本。
書評MLに入っているので順番に読んで紹介していかなければなりません。なかなか良いシステムですね。
この本は,MBAで習ったファイナンスの知識をより実践的なものにしていきたいと思って,まず手にした本です。とにかく継続して深めていかないと,Bondで得た知識だけでは不十分です。2冊選んでみました。
- 作者: 住友信託銀行マーケット資金事業部門
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2006/02
- メディア: 単行本
MBAを取った後,何を専門としたいか?
僕の場合は,
Trend analysis & Energy strategy
にしようと考えています。もちろんそんなコースは無いので自分で作ります。
Corporate Strategyで学んだことに近いかな。大前さんのスタイルを技術系にはめ込んだ感じ。
その第一歩を踏み出すのに好適な書です。やっぱり地政学は外せません。
あと,やっぱり出ていたので買いました。昔の英語論文の翻訳ですが,なぜ,今これを?という本音が気になります。やっぱり,大前流戦略論 というのを著書として残しておきたかったのでしょうか?大前さんの,フレームワークじゃなく顧客のことを真剣に考えよう,っていうスタンスは賛同します。フレームワークは所詮考えるためのツールに過ぎません。人の心を動かすのは,真剣な熱意であり,誠意であり,汗であり,努力,泥臭さ,,だと想います。
おっと,読むより買うスピードが速いじゃない。
Ethnocentricを解き明かす本 [図書室]
お薦め度 ★★★★☆
ドイツ語で書かれた原著を,別の日本人が訳しています。著者は松原久子。僕が非常に面白いと思う著者の一人です。松原の本は3冊読みましたが,3冊目のこの本が,タイミング的にばっちりはまりました。ちょうどヨーロッパで体感してきたばかりですので。
内容はタイトルそのまま。欧米人の優越意識がいかに都合よく作られたものであるかを暴いており,痛快感を味わいながら読み進められました。
その昔,ヨーロッパ人は,中国やイスラムからいろんなものを買ってきたために,貿易赤字に陥ってしまい,それを補うために,白人奴隷を大量に輸出した話,日本に開国をさせた直後,金と銀の交換比率の違い(当時国際的には金1:銀10だったのが,日本では金1:銀3)に付けこみ,大量に金を日本から国外へ持ち去っていった外国人の所業などを,史実に基づきながらひとつひとつ明らかにして,論理を展開しています。
今まで全く知らなかった史実(おそらく日本人にもっても,欧米人にとっても)によって,これまで育んできた歴史観が大きく変わりますね。
次の2冊と合わせて読みました。