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二次元的な成長 [Bond-BBT MBA]

私の勤める会社では,主任(入社10年目あたりで初めて付く役職)になった年に,論文を書くことになっている。テーマは,過去の自省と今後の抱負,というようなもので結構広い。
ちなみに,会社は製造業で,勤務先は研究所である。つまり,理系技術者の集団組織である。その中でただ一人,博士号取得よりMBAを優先し,ビジネススクールに通っている(今の職場の中では極めて異質である)。

論文の中身は企業秘密を含む事例を引用しているので掲載できないが,骨組みは,おおよそ以下の通り。

0.はじめに
 サラリーマンとしての存在価値を高めるには,二つの軸がある。
1.付加価値を高める軸
 さらに,この軸には二つの視点がある。
 1.1  個人としての付加価値を高める
  必要な資質は4点。
  (1) 戦略的なアイデア発想法
  (2) 最先端の知識と技術習得
 (3) 当事者意識と集中力の発揮
 (4) 現象を見つめる洞察力と好奇心

 1.2  組織としての付加価値を高める
  必要な要件は,異文化コミュニケーション

2.生産性を上げる軸,つまり労働コストを下げる軸
 (1) 業務の失敗の排除
 (2) 情報の適切な管理

3.現状の課題
4.今後の進むべき方向性


論文を書く上で,次のことを意識している。
 ・文章の構造化
 ・MECE
 ・学習や成長を,複数の軸に因数分解して論じるというスタイル


とまぁ BONDのレポートで普段から書き慣れている通りに,書いてみた。他のメンバーは,研究開発に関する技術論文のような体裁であるので,かなり目立ったに違いない。MBAを取得しようと考える自分の等身大の哲学がどういう風に捉えられるのか試してみたかった。と思ったら,幹部からコメントが出てきた。

■幹部 No.3からのコメント
・ 二次元平面上の右上がりの直線でものを考えると,成長しない。
・ 成長とは,厚みをもった三次元の広がりであり,第三の軸は人間力である。
・ 文藝春秋1月号にある記事を読め(天外伺朗,成果主義がソニーを破壊した)。

何とまぁ,偶然とはあるもので(エハラー風に言えば,必然なのだが),年末に単身赴任中の父が,文藝春秋を僕に読めと,正月に渡してくれていたのだ。

さっそく読んでみた。
天外伺朗(てんげしろう)という著者は,ソニーの元上席常務である。この著者の言わんとするところは,凡そ以下の通り。

・成果主義は,人間のパフォーマンスを数値化して,客観的で公正な評価を下そうというものだが,客観的で公正な評価なんてムリである。コンサルティング会社が作成した評価システムを導入した企業は軒並み業績を落としているように見える。
・成果主義の弊害は,短期的な結果を求めがちになり,地道な業務がおろそかになり,品質低下など思わぬクレームを引き起こすこと。また,社内の雰囲気が悪くなることである。
・アメリカでは,成果主義を否定するフロー理論が登場した。その趣旨は,自由闊達で愉快な職場づくりであり,ソニーの設立趣意書そのものである。
・井深大時代の“長老型マネジメント”が,21世紀型企業のマネジメントスタイルである。徳のある長老に率いられた集団が自律的に目標に向かい,一丸となって燃える集団である。
・人間は経済的合理性だけで仕事をするわけではない。

これは,MBA流人事の対極にある反論である。もちろん,発言の中には矛盾を指摘したくなる部分もある。例えば,日産のように業績を上げている企業もあるとか,エンゲージメントの高い職場作りと,評価システムとは両立できる,というように。だが,こういう局所的な論争に全て打ち勝ったとしても,イデオロギーの対立は残りそうな気がする。

 

さて,人間力を加えた三次元の広がりで成長を評価すべきという考えには賛成である。ただ,それこそ人間力なんて評価できるもんじゃないからこそ,比較的評価しやすい経済的合理性の軸で評価するしかないのではなかろうか。人間力があるかどうかは,一緒に仕事をしている人間ならおそらく分かるはず。経済的合理性の資質は,トップが評価し,人間力は部下が評価する。この合計でリーダーを選定するというのはどうかな。

 

■幹部No.2からのコメント
・技術の論文を加えてください。他人とのトーンを合わせたい。


というわけで,3連休は,なぜか論文の続きを書く羽目に。12月中旬に提出しているんだから,もっと早くいってくれよー。

 


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